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エネルギーマネジメントシステム(EMS)の仕組みと空調からはじめる省エネ対策
近年、電力料金の高騰や脱炭素社会への対応といった課題が急速に進行し、対応に苦慮している企業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。対策として省エネの取り組みが重要ですが、人の努力による節電だけではこうした課題に十分に対応するのは難しくなってきました。そこで注目されているのが、「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」です。
EMSはエネルギーの使用状況を「見える化」し、快適性や生産性を損なわずに電力使用効率を最適化する仕組みです。本記事では、EMSの基本的な仕組みや導入メリット、導入のプロセスのほか、手軽にはじめられるEMSとして注目されている「空調省エネ」について紹介します。
目次
エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは
エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System:略称EMS)は、施設内で使用される電力、ガス、熱などのエネルギー消費量を一元的に把握し、無駄を減らすことを目的とした管理システムです。日本では「エネマネ」と呼ばれることもあります。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の役割と仕組み
EMSの主な機能は以下の3段階に分けられます。
- 計測・モニタリング(見える化)
各設備のエネルギー使用量をリアルタイムで把握し、どの機器がどの時間帯にエネルギーを多く消費しているかを明確にします。 - データ収集・分析(わかる化)
過去のデータや季節要因などを分析し、エネルギー効率の悪い箇所やピーク時の電力消費要因を特定します。 - 制御・最適化
分析結果をもとに空調や照明などを自動・手動で制御して、エネルギー消費量を調整、最適化します。
これらのプロセスを継続的に行うことで、エネルギーの使用効率が高まり、コスト削減やCO2排出量の低減が実現します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)が注目される背景と重要性
EMSが企業にとって重要なシステムとして注目されているのは、次のような社会的・経済的要因が関係しています。
電気料金の上昇
化石燃料価格の上昇や為替の変動、再エネ賦課金の上昇など、発電コストの上昇にともなって電気料金の負担が大きくなっています。エネルギーを効率的に使うことが、経費削減の鍵になります。
企業に求められるCO2削減
2023年4月、省エネ法が「エネルギーの使用の合理化および非化石エネルギーへの転換等に関する法律」へと改称され、一定規模以上の特定事業者には省エネと脱炭素の同時推進が求められるように改正されました。CO2削減は一部の企業を中心に行われるようになっただけでなく、その取引先にも「CO2削減」と「CO2排出量の算定」の動きが広がっています。その一つとして、エネルギー使用量を可視化し削減に活用できるEMSは、企業の対応力を高める重要なツールともいえます。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類と特徴
対象となる施設の種類や規模によって、EMSに求められる機能は異なります。ここでは、代表的な5つのEMSの種類とそれぞれの特徴をわかりやすく説明します。
| EMSの種類 | 対象となる主な施設 |
|---|---|
| BEMS(Building Energy Management System) | オフィスやビル、商業施設 |
| HEMS(Home Energy Management System) | 一般家庭 |
| FEMS(Factory Energy Management System) | 工場 |
| MEMS(Mansion Energy Management System) | マンション全体 |
| CEMS(Community Energy Management System) | 地域全体 |
BEMS(Building Energy Management System)
BEMSは主にオフィスやビル、商業施設などを対象とし、空調や照明、エレベーター、EV充電器、蓄電池など建物内設備を統合的に管理します。フロアごとの電力使用量を可視化でき、自動制御機能を備えることでピーク抑制や消費削減を実現します。
HEMS(Home Energy Management System)
HEMSは一般住宅を対象としたEMSで、家電や給湯設備、太陽光発電、蓄電池などを家庭内ネットワークで連携させ制御します。電気の使用量がリアルタイムで把握でき、節電や電力の自家消費の促進に役立ちます。
FEMS(Factory Energy Management System)
FEMSは主に工場向けで、空調や照明に加えて製造ラインやコンプレッサー、ポンプ、ボイラーなどの動力設備までを管理対象に含みます。生産計画とエネルギー制御を連動させ、効率的な電力使用と生産性の両立を図ります。
MEMS(Mansion Energy Management System)
MEMSは集合住宅(マンション)を対象とし、共用部の照明や空調、エレベーターの電力管理ほか、各戸の電力使用量の管理も可能です。
CEMS(Community Energy Management System)
CEMSは地域単位でのエネルギー管理を目的とし、複数施設や住宅を含むエリア全体の電力需要と再生可能エネルギー供給を最適化します。スマートグリッド構築において鍵となる役割を担っています。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入メリットと注意点

企業がEMSを導入する際には、エネルギーの効率化だけでなく、運用コストや運用体制も考慮する必要があります。ここでは、導入によって得られる主な効果と、注意すべき課題を紹介します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)導入のメリット
EMSは、単に電気使用量を把握するためのツールではなく、施設のエネルギー運用効率や環境への対応、設備管理を包括的に支える仕組みです。導入することで得られる主なメリットを以下にまとめました。
エネルギー使用状況の「見える化」
EMSの最大の特長は、電気などのエネルギー使用量をリアルタイムで可視化できる点です。どの部署や設備が、いつ、どれだけのエネルギーを消費しているかが数値として把握でき、最適な稼働に近づけるきっかけになります。
可視化されたデータはグラフや管理画面のダッシュボードで共有できるため、担当者だけでなく経営層や現場スタッフも省エネ意識を高めやすくなります。
電気料金やエネルギーコストの最適化
データの分析により、ピーク時の電力使用量を抑える「ピークカット」や、契約電力の見直しなどが可能です。
また、不要な照明や空調の稼働を自動制御することで、人的管理に頼らない省エネを実現できます。こうした継続的な最適化は、施設全体の経費構造を見直す第一歩になります。
CO2排出量削減と環境負荷の低減
EMSを活用すると、効率的なエネルギーの利用によりCO2排出量の削減にもつながります。加えて、温室効果ガス排出量の把握や削減効果の「見える化」も可能になります。
CO2の排出を抑えることは、政府が推進する脱炭素化への貢献に加え、電力の消費過程で生じる環境負荷全体の軽減および企業の環境経営(ESG、SDGs対応)にも寄与します。
デマンドレスポンスへの対応強化
電力需要が集中する時間帯に、電力会社やエネルギー管理システムからの要請に応じて、一時的に電力使用を抑制する仕組みを「デマンドレスポンス(Demand Response)」といいます。
EMSを導入していると、照明や空調などを自動制御で一斉に調整できるので、節電要請への対応がスムーズになります。
この仕組みは国内の電力供給の安定化に貢献するだけでなく、インセンティブ型の場合、節電達成度合いに応じた電気料金の割引などのインセンティブを受け取ることができます。
出光興産の電力供給サービス「出光でんき」では、節電プログラムを実施しています。出光興産からの節電要請に応じて節電を達成した場合、インセンティブを受け取ることができ、電気料金の削減に寄与します。
デマンドレスポンスの詳細は、以下のページをご覧ください。
Check!
設備の異常や劣化の早期発見
消費電力量の変化を常時モニタリングすることで、異常値や想定外の使用パターンを検知できます。
これにより、モーターの過負荷や空調機器の異常運転など、設備トラブルの兆候を早期に発見し、突発的な停止や修理コストを未然に防ぐことにつながります。製造現場などでは稼働率の維持にも大きく貢献します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)導入の注意点
多くのメリットがある一方で、EMSには導入コストや運用体制の確保といった課題も存在します。事前にリスクを把握し、長期的な視点で計画することが重要です。
初期投資およびランニングコストの発生
EMS導入には、ハードウェア費用(計測機器)、ソフトウェア費用(管理システム、分析ツール)、工事費用(設置工事、配線工事)など初期費用が発生します。そのほか、運用準備費用(初期設定、教育訓練)に加えて、運用費用(保守管理費、通信費)といったランニングコストも必要です。導入時には初期費用と投資回収期間の試算が欠かせません。
システムの複雑性と運用体制の課題
EMSは多様な設備やセンサーを連携させて動作するため、設計・設定が複雑です。導入後に教育や共有が十分でないと、機能を活かしきれず「導入しただけ」になってしまう可能性もあります。有効に活用するためには、エネルギー管理担当者の配置や運用体制の整備が求められます。
これらを踏まえ、次に重要になるのが「導入パートナーの選定」です。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)導入におけるパートナー選定の重要性
EMSの効果を最大化するには、システムそのものの性能だけでなく、導入支援や運用サポートを行う導入パートナーの選定が大きな鍵を握ります。EMSはサービス提供事業者によって対応できる設備などが異なるため、自社の設備構成や目的に合った事業者をパートナーとして選ぶことが重要です。
特に、導入後に分析レポートの提供や改善提案を継続的に行なってくれる事業者を選ぶことで、EMSの効果を長期的に維持しやすくなります。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入プロセス

EMSの導入に際しては、システムをただ入れるだけではなく、段階的な計画と継続的な改善が必要です。実効性のあるEMSを導入するための5つのステップを紹介します。
- 現状分析(管理対象と実態の把握)
自社のどの施設・設備を管理対象とするかを明確にします。空調、照明、動力設備など主要なエネルギー消費機器の使用量を調べ、現状の無駄や改善余地を洗い出します。 - 目標設定(数値目標と評価軸の明確化)
削減率やピーク抑制量などの具体的な目標を数値化します。評価の基準や計測方法を明確にすることで、導入後の効果を正確に検証できます。目標を社内で共有することが、EMS運用の定着にもつながります。 - システム選定(要件適合と運用コストの見極め)
複数のEMSを比較し、自社の施設構成や管理目的などに合うものを選定します。導入実績や保守体制、データ分析機能なども重要な判断材料です。既存設備との接続や、将来的な拡張性も考慮する必要があります。 - EMS稼働と監視(制御・可視化の定着)
稼働データをダッシュボードなどで共有し、部門ごとにエネルギー使用量の見える化を進めることで、省エネ行動を社内全体に広げます。 - PDCA運用(ISO50001に沿った継続的改善)
PDCAサイクル(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Act=改善)を継続的に回します。
ここで参考になるのが「ISO50001」です。ISO50001は、国際標準化機構(ISO)が定めた「エネルギーマネジメントシステムに関する国際規格」で、組織がエネルギーの使用を継続的に改善するための枠組みを示しています。
導入しやすいエネルギーマネジメントシステム(EMS)「空調省エネ」とは

EMSのさまざまな機能と効果を紹介しましたが、施設の電気使用量の削減を手早くはじめたい場合は、空調の制御に特化した「空調省エネ」型のEMSが有効です。どのような仕組みで導入しやすいのかを解説します。
空調省エネとは
「空調省エネ」は、建物における主要負荷である空調設備に焦点を当てた管理・制御システムです。例えば、資源エネルギー庁の資料ではオフィスの電気代の約48%は空調機器が占めているというデータがあります。「空調省エネ」では、この大きな負荷に対して「使用量の見える化」「ピークカット制御」「常時制御による使用電力量の削減(省エネ)」を行うことで、快適性を保ちながら空調の消費電力(kW)を削減します。
対象となる施設としては、契約電力100kW以上で、比較的広い空間で一定の利用者がいるオフィスビル、病院・介護施設、商業施設などです。これらの施設では「空調省エネ」を導入することで効果を実感しやすくなります。
出光興産では空調設備を自動制御するシステムを提案しています。空調設備の交換なしで空調の過剰運転を自動で制御でき、快適性を損ねることなく省エネに取り組むことができます。空調設備の自動制御については出光興産の「空調省エネ<BEMS>」のページをご覧ください。
出光興産の「空調省エネ」を詳しく見る9か月で211万円のコスト削減に成功!食品工場の空調省エネ(BEMS)導入事例
「空調省エネ」の効果は、実際の導入事例を見るとより明確になります。ここでは、食品工場で実際に大幅なコスト削減を実現した事例を紹介します。
株式会社文明堂東京 浦和工場様
導入の背景には、菓子製造ライン増強にともなって電力使用量が増加傾向であったことがあげられます。また、近年の気候変動を考えると温暖化抑制のためにCO2の削減にも向き合う必要性がありました。
そこで、出光興産が提案する空調制御システム「空調省エネ<BEMS>」を導入し、エネルギー利用の効率化とCO2削減を実現しました。十分な事前調査とフォローアップによって、体感温度の快適性を維持したまま導入効果を出すことに成功しました。
導入事例の詳細は、以下のページをご覧ください。
電気の見える化と節電プログラムで企業の省エネをサポートする出光興産の高圧電力
ここからは出光興産の「空調省エネ」「節電プログラム」という企業の省エネやCO2削減を後押しするサービスを紹介します。
空調省エネ
出光興産では、自動かつ、快適性も考慮した空調制御が可能なシステムを導入することで、お客様の省エネとCO2排出量の削減をサポートいたします。
空調の過剰運転を制御することで日々の省エネを実施し、年間を通して効果的な省エネ対策が可能になります。
また年間で最も電力需要が高まる時期に空調を制御することで、電気の基本料金削減も期待できます。
出光興産では2つの空調制御パターンからお客様に合ったものをご提案します。
- 外気計測パターン:室外機から、外気温度・湿度を計測し、人間が感じる「不快指数」を計測した情報をもとに、空調の運転時間を制御
- 各部屋計測パターン:人間の背の高さに合わせてセンサーを設置し、各室内の温度・湿度を計測するため、人間の体感温度を加味した空調制御
空調省エネの詳細は、以下のページをご覧ください。
出光興産の「空調省エネ」を詳しく見る節電プログラム
出光興産では「出光興産 節電プログラム」を実施し、電力供給がひっ迫する時間帯に電気のご使用量を削減いただくことで、国内の電力不足の解消に貢献しています。
ご協力いただいたお客様には、節電実績に応じて電気料金値引きを提供するプログラムであり、省エネを通じて電気料金の抑制にご活用いただくとともに、環境負荷の低減にも貢献しています。
節電プログラムの詳細は、以下のページをご覧ください。
出光興産の「節電プログラム」を詳しく見るエネルギーマネジメントシステム(EMS)導入で電力の見える化と省エネを実現
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、電力使用を「見える化」し、無駄を抑えながら効率的な運用を実現する仕組みです。特に空調省エネのような導入しやすいシステムからはじめることで、電気料金の削減や脱炭素化に向けた第一歩を踏み出せます。自社の設備や運用に合ったEMSを選び、継続的な運用改善を行うことが、長期的なコスト削減と持続可能な企業経営につながります。


